横浜都市発展記念館

ハマ発 NEWS LETTER
  • 常設展示より 光降りそそぐモダンオフィス
第4号 2005年2月

1 解体前の

昭和シェル石油ビル

横浜市都市計画局

都市デザイン室提供

-常設展示より-

光降りそそぐモダンオフィス

ライジングサン石油横浜本社

かつて山下町の本町通り沿いに、昭和シェル石油の建物があったことを覚えておられるだろうか。1990(平成2)年に解体されて高層マンションに建て替わったが、日本のモダニズム建築に大きな影響を与えた建築家レーモンド(A.Raymond,1888―1976)の代表作のひとつであり、もとは1929(昭和4)年竣工のライジングサン石油横浜本社であった。

第4号 2005年2月

2 1階事務室

『アントニンレイモンド

作品集 1920−35』より

同社屋はほぼ正方形の敷地いっぱいに建てられた、典型的な都市型建築である。こうした建物は内部にまで十分な採光を得ることが難しい。ひとつの解決策は、建物をロの字形や8の字形にして中庭を設けることである。

設計者レーモンドは、敷地をロの字形に囲う中庭型の平面を採りながらも、中心部分を中庭とはせずに建物内に取り込み、そこにメインとなる事務室を配置した。そして事務室の天井には全面的に二重のガラス屋根を架け、柔らかな自然光が頭上から降りそそぐ明るいオフィス空間を作りだしたのである。

このトップライトのアイデアは、共同設計者であるフォイエルシュタイン(B.Feuerstein)が持ち込んだものとされている。フォイエルシュタインが来日前に関わっていたパリ・アールデコ博の劇場(オーギュスト・ペレ設計、1925年竣工)の天井構成に類似しているからである。

確かに、ペレの作風を好んだレーモンドが、フォイエルシュタインを自らの事務所に招いたといわれる。しかし、ここではむしろ、トップライトという採光の手段が平面計画上、そして空間演出上、都市型建築にとってきわめて有効であったという与条件の存在に注目したい。光につつまれたモダンオフィスの空間は、都市の中だからこそ輝いたのである。

(青木祐介)

ライジングサン石油横浜本社(模型)
縮尺:1/75
ライジングサン石油横浜本社(模型)
 上で紹介したように、ライジングサン石油ビルの見どころのひとつは、部屋一面のトップライトから太陽の光が降りそそぐ1階事務室にある。この空間を表現しなければ、建物の魅力の半分も伝えきれない。
 そこで、建物背面側の四分の一をカットして、そこからオフィス内部、そしてガラス屋根の断面を見ることができるようにした。模型を真正面に向けず、柱を囲むように円形に配置しているのはそのためである。
 震災以後の建造物の歴史をたどる「横浜建築探訪」のコーナー。生糸検査所にはじまり、中央図書館、ライジングサン石油横浜本社と三つのストーリーを円形にたどりながら、あわせて模型の細部も楽しんでいただきたい。